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​声

 大学で体育会に入り、声を出すことを要求される機会が今までよりも格段に増えた。しかもその声は、大きくはっきりとしたものが求められる。私はもともとの声は大きく通るものの、人前で声を出すこと自体はあまり得意ではなく、むしろ苦手な方であった。だからこそ、先輩たちに何度も声について指摘を受けることは大変な苦痛であり、出さなくてもバレなさそう、と思うときには極力出さなかったし、男性の先輩はま

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だしも、女性の先輩方はなぜ平気で声を出せているのだろうと不思議だった。

 しかし、自分がいざ部内で上級生になってみるとその「声」の果たす役割の大きさに驚かされることばかりだった。なんと、声でその日の部活の質を変えられるのである。声を出さなかったり、小さかったり、語にもなっていないような返事をすれば、だらだらとした雰囲気に、はっきりと切れ味のある声を出せば引き締まったなんだか充実した部活になるのである。2019年の部内の声は後者が大半を占めており、当時一年生だった私から見ても部は強かった。しかし、2020年以降、コロナが蔓延した影響もあり声をあまり出さなくなった現在の部はどこか弱いように感じる。つい最近のことであるが、自分が幹部・黒帯になって初めての早慶戦で優賞を逃してしまった。これに直接関係するのかどうかはわからないが、この声を出すという行為は、積極的に部活に参加するということに繋がるのではないかと私は思っている。それが足りなかったために優賞できなかった部分はあるのではないだろうか。

 このことから、声で空間を飾るという行為は単にその空間の雰囲気を変えるだけでなく、その行為そのものが集団への帰属意識を高めるのではないかと考える。

 今まで前述の通り人前で声を出すことが得意でないのを理由に声出しをサボってきた私だが、早稲田に優賞を渡してしまったことが悔しくて仕方なく、まさに今男子部員に負けない声量で声を出している最中である。

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