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アイディアノート

 高校の時は部活、大学ではサークルにて、私はダンスを続けてきている。これまでに2回、作品を作らせてもらう機会があり、その経験が私の陶冶に大きな影響を与えていると思う。

  ダンスの作品を作り始める最初の段階で、存在する

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ものは空間のみである。本番の舞台の、縦幅、横幅、奥行き、高さ、それだけが存在する状態だ。まるで空の箱のようなその空間を、音楽と人間と照明で飾っていくのが、ダンスの作品作りである。どのような音楽で、どのように人間を動かして、どのように光や色を当てるのか。私のアイディアで箱の中身が存在していく。私は、思い浮かんだアイディアを、思いついたときにノートに書き込み、思いついたことを忘れないように記録したり、また作品づくりが思うように進まなくなった時に見返して過去の自分のアイディアからヒントをもらったりしている。

 アイディアを出していくにあたり、知らなかった自分を新しく知ることができているように思う。例えば、ずっとピアノの音は聞こえているのにも関わらず、ある部分のピアノの音だけ際立って目立つような振付を作っていたら、その部分が私にとって強調したい音だったり好きな音だったりするということである。また、センターや前列など、目立つ位置に誰を置こうか考える際に常に頭に浮かぶ人は、私自身がその人の踊りに対して絶大な信頼を置いているということである。気に入っている部分にはいつも白色の照明を当てたくなるのは、白の照明が私のお気に入りであるということである。反対に、好きではないもの、気に入らないものの存在も知ることができる。考えようとしなければ気が付かないことに気が付けるのが、私にとって作品作りの機会である。
 現在の視点から、作品を作った過去のことを振り返ってみて、その時に自分を新しく知れたことが、その後の私の生き方に影響を与えていると感じている。好き嫌いや得意不得意など自分の傾向に気が付いたことで、それらに対する向き合い方が以前と比べて変化したり、以前より自分を理解できたことで、引き続き持ち続けたい自分と、直したい自分についてさらに考えが深まったりする。

  ダンスの作品に限らず、自分の力で、真っ白なキャンバスに絵を描くことや、まっさらなノートに文字を書くことは、自分の頭の中のアイディアでその空間を飾っていると言えると思う。その出来あがったものを見つめることで、自分を捉えなおすことができ、その経験が一歩先の自分を歩き出せるきっかけになるのではないかと思う。

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