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​顔/表情

 顔は、その人そのものだ。スマートフォンの顔認証や顔写真付きの身分証明書があるように、顔はその人であるということの決定的な証拠になる。

 ただし、人が持っている顔は一つではない。これは比喩的な意味だけではなく、本当に人はいろいろな表情をするのだ。泣いたり笑ったり、時には自分が本当に思っているのとは違う表情さえする。

 中高時代の部活から現在まで、合唱をやってきた。合唱の世界は、ルネサンスの宗教音楽から、作曲されたばかりの日本語の曲まで途方もなく広がっている。そのため続けるほどに、共感し共鳴できる音楽だけでなく、自分の引き出しにはないさまざまな感情や出来事をうたった歌に

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も出会う。そのとき、どのような声で歌いたいのかを考え、聴いている人に伝わる表現を目指すとき、声や表情は素ではなく、飾られていると言える。眉や頬の位置を工夫してその表情を作ったり、声に出すことによって自分の中に生まれた歌詞の感情の顔をしてみたりすることで、表現がより伝わるものになる。

 顔は、その人の感情そのものであり、さらに言えばその人そのものである。つまりどんな顔(表情)をしているかということは、その顔をした声を出しその顔の心をもってその人がどう生きているのかということでもある。自分自身の表情を演出することで、理想の自分に近づける気がする。

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